免許不用・届け出も不要。手に取っていきなり使えるハンディトランシーバー
GPS内蔵で相手の位置も分かる長距離通信
アイコムから発売された特定小電力ハンディトランシーバーIC-DRC1。特定小電力トランシーバーは、免許が不要で届け出もいらない無線機ですが、出力が低いため近い距離しか届かないものが多い中、0.5Wまで出力を出すことができ、周波数も142.934375~142.984375MHz、146.9374375~146.984375MHzというアマチュア無線の145MHz帯の上下のエリアを使っているため、いわゆる2mにも近いエリアの周波数帯でより遠くまで電波が届くと話題になっています。
デジタル通信でGPSの位置情報も送信
このトランシーバーはデジタル変調になっているため、音質も非常にクリア。内蔵のGPSにより自分の位置を記録してその情報を相手に送ることで、通話相手との距離を知ることができます。
デジタル通信独特の声の遅れや、PTTボタンを押してから少し間をおいてから離さないと言葉の先頭が切れてしまうなど、多少の遅延はあるものの慣れてくると殆ど気にならなくなります。
登録した相手機のPTTを遠隔操作。見守りに。
この特小機の最大の魅力は電波の飛ぶ距離もそうですが、登録してある無線機が電波の届く範囲内にある場合「周囲音送信機能」と呼ばれる相手機のPTTボタンを遠隔操作で押すことができ、10秒間だけその周囲の音を聞くことができます。
これにより、例えば子供の見守りや、高齢者の見守りなどにも活用できる無線機としても利用が期待されています。
1台を基地局にして子機の位置をマップ上に。
アイコムのウェブサイトで無料で公開されているGPS情報表示ソフトを利用すれば、1台のIC-DRC1を基地局として利用し、パソコンと接続すれば、登録されている機器の位置情報を地図上にプロットすることができます。
この機能を活用することにより、マップ上に無線機を持った人の位置情報をプロットできることから、イベントの際のスタッフ配置の確認や、地域の高齢者の見守り、工事現場などでの作業員同士でのやりとりなど、様々な用途に活用できます。
レジャーでも大活躍!
IC-DRC1はレジャーでもかなり使えるツールとなるでしょう。例えば家族でキャンプや登山、スキーなど山岳エリアや携帯電話の電波が届きにくいエリアなどへ出かける場合、家族との同報通話や位置情報を知らせることでレジャーを便利かつ安全に楽しめます。携帯の電波が届いたとしてもより気軽に家族みんなと同時に話すためには無線が一番。PTTボタンを押すだけで話ができる無線機はコミュニケーションをより気軽なものにします。
スキー場でテスト!
今回、オンエアーズスタッフがゲレンデでの感度を調べるために群馬県の「みなかみ町」にあるノルンみなかみスキー場に行ってきました。実際どの程度使えるのか試してみると非常に良い結果を得ることができました。
鉄骨のレストハウス(センターハウス)内に1人IC-DRC1を持ったスタッフが居て、そこからまずリフト乗り場で通話したところシグナルは59(ここれではアマチュア無線で使うRSレポートを利用します。59は最高感度です。)。
第3リフトにのり、およそ900mくらい先の見通しエリアからでもシグナルは59。第3クワッドからDコースに流れる途中、雑木林の陰になったところから電波を出して59。Dコースを滑りながら見通しではないところから電波を送受信しても59でした。
今回はナイター営業時間にテストをしたため、第1クワッドのエリアまでは試せませんでしたが、この調子だと吾妻耶山に向けた1,4kmくらいはおそらく問題ないという事になるでしょう。また次の機会にさらに入り組んだコースなどで詳しいレポートが出来ればと思います。
いずれにせよ、スキー場でも十分なエリアカバーを見せることが分かりました。
マイクロUSBでの充電に対応
無線機は専用の充電器を用意する場合が多いですが、マイクロUSBを使っているため、スマートフォンはマイクロUSBを利用するものが多いため、充電は携帯電話と同じものを利用できるのもうれしい点です。
また固定アンテナが多い特小機ですが、このアンテナは取り外しが可能で、基地局にするにしてもアンテナだけ外に出したり、利得の高いアンテナに変えて受信精度を上げることで、うまくいくと数十キロ電波を飛ばすことも可能です。実際この無線機とアンテナの位置を工夫して60キロを超える距離を飛ばしているグループもあります。
その他の機能
この無線機の良いところはシンプルな機能であるため、ボタンも少なく操作が簡単であることです。災害時も想定してFMラジオによる電波の受信もワンタッチでできるよう「FM」ボタンもついています。これを押すだけでラジオが受信でき、ラジオを聞いているときに無線を使う場合はミュートがかかって操作の邪魔にならないようにしてくれます。
使えるチャンネルは18chあるため、現状十分なチャンネル数になっています。
通常の特小機とは違う周波数を使っていて、更にデジタル変調であるため、今のところこの機器同士でしか通信はできませんが、今後コミュニティ無線機として普及していく事を期待したい。
メーカー希望小売価格は29,800円となっていますが、さすがにいろいろ搭載しているために少し高めに感じてしまいます。しかしながら免許や届け出もいらずにこれだけの機能があるのならメーカーにあと数千円がんばっていただき、かつ自治体などコミュニティでの活用などが進み、利用者が多くなって来ればその価値は上がり、決して高く感じるものではなくなるはずです。
本機の今後に期待!